2022年 03月 17日
ダマスカスの孤児たちのストーリー3
シリアの首都ダマスカスで雪が降りました。先日ご紹介したアレッポの状況同様、物価の高騰が続き、電気が限られた生活が続いています先日来ご紹介している孤児の子どもたち、今回はヌール、ローラ、ジラーンの三人の女の子です。苦しい生活を経験し、今は手工芸や裁縫など様々なことに挑戦しています。
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今思うと、私の家は家庭崩壊状態でした。父は戦争で5年以上前から行方不明です。父については写真と祖母から聞いた話以外何も知りません。母は、いなくなった父を憎み、私たち子どもたちを理由もなく罵りました。母には責任感が一切ありませんでした。母は父と結婚する前に一度結婚をしていました。その時にできた子どもたちに別れを告げ、父と再婚しました。しかし父が行方不明になった後、私たちもまた捨てられることになりました。私と4人の兄弟姉妹が稼ぎ手にならないと気づいた母は、突然姿を消しました。その後別の男性と結婚したと聞いています。
私たちはダマスカスの田舎の家を失い、公園にあった廃屋に住んでいる祖父と祖母の元に移り住みました。廃墟のような家は半分破壊されており、夏の暑さも冬の寒さにも耐えられません。最低限の生活を営むための公的サービスも受けられません。普段使う水はもちろん、安心して過ごせる家もなく私たちは苦しんでいました。病気の弟が治療を受けられずに病状が悪化して死んでいきました。腰が曲がり年老いた祖父は、パンの値段にもならない小銭を必死に働いて稼いでいました。私たち兄弟は生活の為に路上で物乞いを始めました。見知らぬ人に物乞いをして食べ物や小銭を手に入れ、朝から晩まで恥ずかしく、見苦しい毎日を過ごしていました。
日々が過ぎ、私たちは保護センター(Bee ways)に移り住み、私たちと同じような悲しい過去を持ちながらも、素朴な夢をもち生きる子どもたちと一緒に暮らすようになりました。ここで私たちは生きることの本当の意味を知りました。誰かが自分に注意を向けてくれる喜びを知り、また愛情をもって受け入れてもらいました。空っぽだった胃袋を満たす食事にありつける幸せ、暖かくて清潔で柔らかいベッドで寝られる幸せを手に入れることができました。普通の生活がしたいというシンプルな夢は叶えられ、学校に通うことでより大きな夢を持つことができました。。
私は今中学1年生、真ん中の妹は小学6年生、一番下の妹は小学3年生です。学校に毎日通うことができ、センターでは毎日教育を専門とする先生たちが私たちのために補習授業をしサポートしてくれています。手工芸やリサイクル、裁縫、スポーツなどのスキルを身につける時間もあり、心理学のセッションや社会的コミュニケーションを身につける授業にも出席しています。また、過去の悲劇を思い出したり、精神的に落ち込んだりする時は、心理的サポートも受けることができます。
センターに移り住んで3年、私たちの生活は大きく変わり、知らず知らずのうちに奪われてきた子どもの権利を取り戻し、愛と思いやりのある環境で日々成長しています。
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(映像は今朝ダマスカスから送られてきた雪の様子。BGMで流れるのはシリアでは毎朝街中から聞こえてくるレバノン出身の歌姫フェイルーズです)
作成者: 田村 雅文
by team-beko
| 2022-03-17 00:42
| Team Beko